地形、川の水利などから農業上の共同体を古くから形成している
集落にある、住宅の離れの計画である。
この集落には離れ文化が根付いている。離れは変化する社会と
のインターフェイスとして機能している。母屋は生活の基盤である
ことは時代を経ても変わらないことが多いが、一方、離れは家族
を取り巻く変化に応じて柔軟に対応しながら建て替わり続ける。
本計画は、もともとここにあった蔵と納屋が一緒になった離れを
建て替えすることが求められた。
農家、大工、庭師、会社員など代々の主業並びに副業、あるいは
学業の要望によってこれまでも離れの姿を変えてきた。
現在ご家族は、65歳未満に農業従事60日以上の者がいない、い
わゆる「副業的農家」に該当する。主業は会社員である。
そこで求められた機能は四つ。蔵、農作業場、駐車場、そして日常
の様々な場面で家族みんなが使用できる多目的な居室である。
日常的な動きが少ない蔵は2階とし、それ以外は1階にリニアに並
べて、母屋との関係性を築きたいと考えた。1階での活動を統合す
るように深い下屋を設ける。下屋の下は半屋外空間となり日常の
活動が庭まで拡がることを期待した。さらに、母屋と離れの軒先同
士をシュロ縄で結んで繋いでいく。縄には洗濯物や様々な野菜、
小さな道具が吊られていく。
離れの計画を通じて、この土地を住み継いでいくことを考えてい
ただくきっかけになればと設計した。