遠回りな家
矩形平面の中に、互い違いに間仕切壁を建てていって、ひとつの住宅を構成していく、という原則を提案した。
居場所同士の最短距離を廊下で結ぶという効率的な動線ではなくて、身体を180°旋回させながら移動する、動線がすごく長いプランの提案。
わざわざ遠回りする。ハラハラ移動する。ジグザグ歩く。そんな、ある意味では非効率な行為が、建物の面積以上に、感覚的な広さを感じることができるのではないかと考えた。
この建物の平面を横断する最短の歩行距離、つまり対角線で結んだ距離は約12mだが、互い違いに立てた内壁に沿って行く歩行距離は約25mとなり、2倍にも及ぶ。
距離を歩くという動物的な行動によって、15坪の平面をより広く、より奥行きのある状態へとデベロップさせることを意図した。
この間仕切壁によって、生活が一気に見通せるのではなくって、向こうがあってこちらがある、
こちらがあって振り返るとまたあちらがある、というふうな重層的奥行きを生む。そんな奥行きのなか、歩を進めるたびにさまざまな居場所みつける。
小さく囲まれた居場所、屋外と繋がって開放的な居場所、思わず溜まりたくなる居場所、能動的に動きたくなる居場所。
さまざまな居場所を巡る、散策路のような住宅を、極めて単純な方法で実現した。さらに、この住宅の建つ土地に至るには幹線道路からクネクネと小道を曲がりながら、奥へ、また奥へという感覚がある。
まちの持っている構造をダイレクトに感じる体験。そんな感覚も住宅内に取り入れたかった。そういう意味で、まちともつながりたかった。
建物の面積と生活の奥行きは無関係だ、そう言いたい。生活の奥行きに豊かさをみつけよう。
この建築がそんな奥行きの豊かさの発見に寄与できるように、そう願っている。
建築概要
名称 | 互い違いの内壁/homeHR |
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所在地 | 愛知県知多郡 |
用途 | 専用住宅 |
階数 | 地上2階 |
敷地面積 | 193.39㎡ |
建築面積 | 57.96㎡ (建蔽率29.97% 許容60%) |
延床面積 | 144.96㎡ (容積率59.45% 許容150%) |
竣工 | 2013年7月 |
構造・構法 | 木造在来工法 |
建築設計 | 市川大輔/adm |
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施工 | Dウッドホーム |
竣工写真 | エスエス名古屋支店 |