空き家のこと
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僕がまだ小さかった頃、祖父の家は建て替えする前で古く、
L字型の妙に細長い家だったのを記憶しています。
平屋で、増築が繰り返されていたからだと思います。
その家には小屋裏があったのですが、階段がとても急なせいもあって、
幼い僕はあんまりそこに上がらせてもらえませんでした。
たまに上がる小屋裏は暗く、物が所狭しと置かれ、
ひどくカビ臭くて近寄りがたい印象がありました。
進んで登ったりしませんでした。
日常のすぐ上にある、立入り禁止の黒い陰。
まちづくりの議論がとても盛んな、半田市亀崎にある、
空き家になってしまった古い住宅を見せていただく機会に恵まれました。
中に入ると少し埃っぽくて、
住まわれなくなったその時から時間が止まったようでした。
収納の中には立派な背広がそのままです。
壁に掛けられた電車の時刻表は1994年のままです。
ここにも小屋裏部屋があって、ハシゴのように急な階段を上がっていると
唐突に、祖父の古い家の小屋裏が思い出されました。
空間は、懐かしいとか感慨深いとか、そういう言葉を使わずに
懐かしさや感慨深さをもたらします。
言葉を通過させずに、時空を超えて、思い出にある風景と重なったりします。
亡くなった祖父を思い出したりします。
年月の経った空間は、個人的な記憶に閉じていないんだな、とつくづく思いました。
空き家対策特別措置法が施行されて、
全国各地で空き家対策が色んなかたちで実行に移されると思います。
建て替えや用途変更、改修や修繕、清掃。
どんなかたちであっても
その空間の記憶ができるだけ濃密に、できるだけいきいきと受け継がれるといいな。
変化を受け入れて、時間を経て、また空間と出会うんだ。