スタイルなきスタイル(未完成であること)
はたして、つくばに固定されたスタイルというものが必要だろうか?つくばは常に実験的に新しいものを受け入れてきた。
つくばの持つ実験性。それは常に新しいこと。常に流動的であること。常に変化し続けること。そこにこそつくばという都市の魅力と可能性が含まれている。
固定的なスタイルを拒否する。「スタイルなきスタイル」。それは完成してしまわないということ。未完成であること。未完成の持つある種の「強さ」がつくばという都市を常に新鮮で面白くする。
一つの住宅が「未完成」につくられることを提案する。おおらかに。軽やかに。変化を感じながら。自由に。
小さなリレーションシップ
4.5m×2.7m×1.8mのロの字型フレームがただ連なって住空間をつくり出す。フレームとフレームの小さなリレーだけが一つの住宅をつくり出していく。フレームの連なりとは、掘り進む洞窟のように「未完成」である。機能を限定しない。住む人を拒まない。本質的なバリアフリー。フレームは少しずつズレながら連なる。
このズレが、時に樹を避けて庭をつくったり、時に部屋間や住戸間のプライバシーをコントロールしたりする。連続と独立。ズレによって生まれる奥行きが「住むための場」を構築していく。
環境/資源が住宅内に入り込む
この住宅は敷地にポツポツと軽やかに置かれる軽装備な住宅。そんな軽装備ゆえに住宅内につくばの環境/資源が簡単に入り込んでくる。例えば、ロの字型フレームの連なりの一部を大きくズラすだけで
容易に「ハナレ」空間が出来上がる。その一室を学園都市に通う研究者や学生に下宿先として貸し出す。とたんに住宅内に知的資源がにじみ込んでくることになる。それは下宿先だけでなく、小さなオフィス、ギャラリー、ラボ、アトリエ、ショップなども考えられる。つまりは都市という得体の知れない環境が生活に歩み寄り、楽しさと豊かさをもたらしてくれる、そういう可能性がつくばにはある。
つくばでしかできない気軽な環境/資源とのつきあい方をこの軽装備な住宅が可能にする。